注目の消防車両 CLOSE-UP! 救助工作車 II型

 高知県の南央部に位置する土佐市において、高知県内初となるバス型救助工作車が配備された。土佐市消防本部では本署に配備された救助工作車により市内全域をカバーしており、運用する救助隊が平成31年度より緊急消防援助隊に登録されたことなどをふまえ、今回の車両更新を機に仕様のバージョンアップを行った。

 最大の変化はバス型(キャブバス型)への進化だ。これは緊援隊として広域応援出場する際の長距離移動を考慮してのものだが、同時に、日常の運用面を考慮した上での進化ともいえる。同本部では支援系車両や水難救助車両などの特殊車両がないことから、災害現場において指揮を執る拠点や水難救助事案時における装備着装(着替え)などが行える機能を救助工作車に盛り込み、多目的に使用したいと考えたのだ。そこで、車内空間を広く確保できるバス型とすることを決定し、その室内にも様々な工夫を盛り込んだ。

 車内は前部2席後部3席の構造で、後部座席は横一列の配置とすることで足元空間を最大限に確保しており、装備着装なども容易に行えるようになっている。また、通常は後部座席横に収納してあるテーブルの天板を設定すれば、車内を作戦室として活用することも可能。天板も折り畳み式となっており、畳んだ状態であれば1席分の筆記台として、展開すれば2席分の作戦卓として活用できるなど、フレキシブルな対応が可能だ。また、折り戸直近の座席は目前に収納ボックスを備えることから、足元が若干狭くなってしまう。広域応援に伴う長距離移動の際などは引き出しを取り外すことで、全隊員が下肢を伸ばせるように配慮している。さらに、後部乗降ドア周りも注目だ。同車には飛鳥特装株式会社考案の全国初となる折り畳み扉連動式電動ステップを搭載。車外側に自動展開するステップを設けることで、通常であればもう1段分狭くなってしまう車内側足元空間を確保することに成功しているのだ。

 高知県内にバス型救助工作車がない事から、仕様作成に当たっては徳島県や近畿圏の消防本部へ視察を行い、また、全国各地の消防本部に資料提供を依頼するなどしてイメージを固めていったという。全国の同志の協力があったからこそ、県内初となるバス型救助工作車の導入が実現できたと関係者は話す。

 

高知県初となるバス型救助工作車。艤装を担当したモリタ製のバス型としても四国で初めての車両となる。(写真左)/補助警光灯や作業灯、テールランプはクリアレンズで統一し、すっきりとした印象を与えている。(写真右)

 

左側面の状況。シャッター部には市民に親しみを持ってもらえるよう、市内の宇佐しおかぜ公園にあるザトウクジラのモニュメントをイメージしたマーキングを施している。

 

左側積載庫内の状況。電動式大型油圧救助器具を採用し省スペース化を図っている。

 

右側面の状況。基本デザインは左右同等だが、車内空間を最大限に確保すべく、こちらの面には折り戸を備えていない。

 

右側積載庫内の状況。投光器一式や送排風機などのツールが整然と収められている。

 

フロントウインチには大橋機産製タフワインドMCW550RRT-S(最大引張力50kN)を採用。

 

後部には可搬式ウインチ収納スペースが設けられている。

 

クレーンブーム下のデッドスペースにアルミボックスを備える。

 

積載梯子は昇降装置により容易に出し入れすることができる。

 

飛鳥特装株式会社考案の折り畳み扉連動式の電動ステップが全国で初めて搭載された。

 

空間を最大限に確保した車内スペース。

 

テーブルの天板を折り畳んだままセットした状況。

 

テーブルの天板を展開してセットした状況。

 

折り戸直近の座席は目前に収納ボックスを備える(写真左)。通常運用では問題ないが、広域応援に伴う長距離移動の際は隊員への負担が大きくなってしまう。そこで、ボックスの引き出しを取り外すことで、この座席の隊員も下肢を伸ばせるように配慮している(写真右)。

 


 

SPEC DATA
車名 日野
通称名 レンジャー
シャーシ型式 2KG-GX2ABA
全長 8050mm
全幅 2350mm
全高 3210mm
ホイルベース 4000mm
最小回転半径 6.8m
車輌総重量 11985kg
乗車定員 5名
原動機型式 AO5C
総排気量 5123cc
駆動方式 4×4
ウインチ/前(能力) 大橋機産製MCW550RRT-S(最大引張力50kN)
クレーン ユニック製UR-G343GQKA(2.93t×2.6m)
照明装置 湘南工作所製6000UDCL-D
配備年月日 平成31年2月13日
蟻装メーカー 株式会社モリタ

 

 


 

お 知 ら せ
本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。
また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

 


 

取材協力:土佐市消防本部

写真:伊木則人

文:木下慎次


初出:web限定記事


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