注目の消防車両 CLOSE-UP! 指揮統制車(コマンドカー)

 統合機動部隊の創設に合わせ、その中枢で活躍する指揮統制車(コマンドカー)が誕生した。同車の使命はテロ災害等の現場に出場し、情報集約機能を駆使して統合機動部隊の指揮を執ること。東京消防庁では各種災害現場の活動支援及び指揮本部運用、あるいは広域的な災害派遣車として活用する車両としてこれまでも指揮統制車を整備してきたが、従来の車両はトイレや給水設備等も備える後方支援機能を備えていたのに対し、コマンドカーは指揮車としての機能が強化された新たなる仕様で製作されている。

 同車が誕生した背景には、ラグビーワールドカップや東京2020大会(オリンピック・パラリンピック)の開催に伴うテロ発生リスクの増大が挙げられる。爆破テロや大規模災害が起きた場合、従来は指令管制を担う本庁の総合指令室に現場指揮機能を置くことになっていたが、当該災害以外の通常災害への対応が手薄になる懸念があった。また、指揮官が現場へ急行し部隊に直接指令を下すことができれば、臨機応変な対応を迅速に行うことができるようになる。そのための専用車両として開発されたのが同車なのだ。

 通信系機器や映像系機器が強化されているコマンドカーには、消防・救急デジタル無線機や400MHz携帯無線機(署活系無線機)に加え、指令管制端末や指令プリンタが備わる。また、作戦室としてのスペースを車内に確保するため、車体には片側拡幅機能を装備。この作戦室と本庁の対策本部等を繋ぐTV会議端末も備えられている。

 テロ災害などの大規模災害においては危険度に応じたゾーニングが実施され、現場の最深部には容易に接近することができないという実情がある。これに対処するのが充実した映像系機器だ。まず、同車には4方向カメラを備えた伸縮ポールで360度全周を見渡せるポールカメラを装備。車内の13面モニターや車外の2面モニターで確認することができる。また、ヘリテレ端末により消防ヘリが捉えたヘリテレ映像を確認したり、消防技術安全所のドローン映像を映し出すこともできる。さらに、活動隊員が装着した映像位置情報共有装置の発信装置から得られる映像も確認可能であり、こうしたあらゆる「目」により死角を排除し、リアルタイムに現場状況を把握することが可能になっている。

 

東京消防庁が新たに製作した指揮統制車(コマンドカー)。従来型とは車体構造や機能が全く異なり、統合機動部隊を指揮する統合指揮隊専用車両として設計がなされている。

 

バス型構造の車体形状で、右側面には拡幅機能を有する。

 

拡幅部を広げた状況。

 

左側面にはモニター2基が備わっており、車外から各種映像情報を確認することができる。(写真左)/車両後方には積載スペースが確保されている。(写真右)

 

車体の両側面には東京都の地図が大きく描かれ、「COMMAND CAR」の文字が入る。

 

車両後部に伸縮ポールを備えており、先端には4方向カメラを搭載。

 

隊長席後方には可搬型ラックがあり、指令管制端末や液晶ディスプレイ、ネットワーク装置が備わる(写真左)/運転席後方には映像・音声の切替装置や各種無線機を備える。(写真右)

 

拡幅後の車内の状況。広い空間を活用して作戦室として使用できる。

 

車内の壁面には各種映像情報を一挙に映し出す13面モニターが備わる。

 

同車と合わせてデビューした統合指揮隊専用の防火衣。他の隊員と一目で識別できるよう、従来の各防火衣とは全く異なるカラーリングがなされている。紺を基調に肩から腕にかけて赤の差し色が入れられており、火消袢纏を連想させるデザインとなっている。

 

 

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本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。
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取材協力:東京消防庁

写真・文:木下慎次


初出:web限定記事


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