走る救命救急室「エクモカー」完成!
新型コロナウイルスの重症患者の命をつなぐ最後の砦、人工心肺装置「ECMO(エクモ)」。この装置を装着した患者を搬送する専用車両「エクモカー」が不足している。用途が限定的で車両や積載装備のコストも高いという点がハードルとなっているのだ。そうした中、千葉県内で初のエクモカーとして千葉大学医学部附属病院に配備された車両は、定番のトラックベースではなくマイクロバスをベースとし、日本初の国産ECMOストレッチャーを採用することで大幅なコストダウンが図られている。
同車の製作にあたっては、ドクターカーやDMAT出動車両としての機能も備えることがテーマとして掲げられた。DMATとして出動する際には被災地へ向け隊員と共に物資なども大量に積載する必要があり、長距離移動が想定されるため、乗車する隊員の負担を少しでも減らす必要がある。この点もトラックより全長が長いマイクロバスをベースとすることで無理なくクリアしており、ECMOストレッチャー搭載スペースとは別に座席や積載スペースを確保するとともに、多数傷病者対応としてもう1基のストレッチャーを搭載しての傷病者2名同時搬送が可能という、従来のエクモカーには前例のない仕様を実現している。また、人を乗せることを前提としたクルマ(マイクロバス)であるため走行性能も高く、移動中の揺れが抑えられ、隊員と患者の負担軽減につながっている。
さらに、同車は広い車内空間を活かし、緊急時には車内において開胸や開腹手術を行うこともができる。そのために、360度から患者へアプローチできるよう座席の座面は跳ね上げが可能になっており、室内灯はどの角度からも均一に照射できるようレイアウトされている。
病院救急車に求められる性能を集約し、多機能型救急車両として設計された同車は、エクモカー普及のカギを握る存在として大きな注目を集めている。
SPEC DATA | |
車名 | トヨタ |
通称名 | コースター |
シャーシ型式 | 2PG-XZB70V |
全長 | 7240mm |
全幅 | 2080mm |
全高 | 2750mm |
ホイルベース | 3935mm |
最小回転半径 | 7.2m |
車両総重量 | 5715kg |
乗車定員 | 9名 |
原動機型式 | N04C |
総排気量 | 4.00L |
駆動方式 | 2輪駆動 |
艤装メーカー | 株式会社ベルリング |
お 知 ら せ |
本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。 また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。 |
取材協力:株式会社ベルリング
写真・文:木下慎次(株式会社ライズ)
初出:web限定記事