注目の消防車両 CLOSE-UP! 救助工作車 III型

 

車内

 

緊急消防援助隊登録車両では車内空間確保により後列隊員の負担軽減が図られることが定番となりつつあるが、一方で、長時間に及ぶ運転操作という極度の緊張と疲労を強いられる機関員の負担軽減策はあまりなされていないという実情がある。同車ではこの点もしっかりと配慮。純正シート(ノーマルシート)に比べドライバーの身体に掛かる負担を軽減する性能が高い長距離トラック用のシートを採用し、専用台座を作り込み設置している。(写真左)/運転室上部も空間が確保されており、防火帽などを吊り下げておける。(写真右上)/センターコンソール周辺。6速ATで運転しやすい。(写真右中)/車両後部の誘導隊員の声をクリアに拾うインターホン装置。(写真右下)

 

前列と後列の間には収納スペースや積載資機材の充電ステーションなどを備える。また、後列側には大型の手すりを設け、出場途上の車内着装などが安全に行えるよう配慮されている。(写真左上)/後部座席の後方に堀込式のラックが設けられ、初動時に必要な検知系資機材などを収納している。また、手すり部分には水難救助用の装備を吊り下げておくことができる。(写真右上・右下)/後列用のクーラーの下に「アウトリガー」「クレーン」「照明装置」の収納状況を示す警告灯(後列隊員用)を備える。(写真左下)/後列ドア横には扉の開放状況を知らせる警告灯と合わせ、方向指示器と連動した右左折警告灯を装備。後列隊員が車両の挙動を容易に把握することができる。(写真中下)

 

 

後列乗降ステップの蹴込み部分にも収納を確保。マーキング用スプレーやチョーク(写真左上)、ウインチ用リモコン(写真左下)を収める。/ドアを開放してすぐの場所にあたる座席脇に手指消毒用スプレーボトルを収める専用ホルダーを確保。現場におけるデコンを意識しての工夫だ。(写真下中)/後列側の吊り棚収納にはAEDなどの救急アイテムや検知器などを収納。(写真右上・右下)

 

 

特徴的な積載資機材

 

充電式工具の性能が向上していることから救助活動における動力系資機材とは別に、初動強化を目的に「その他の携帯救助工具」として「充電式インパクトドライバ」「165mm充電式マルノコ」「充電式レシプロソー」「充電式ディスクグラインダ」「24mm充電式ハンマドリル」「充電式チェンソー」を備えており、同じマキタ製とすることで使用バッテリーの互換を可能としている。現場使用を考慮すれば予備バッテリーを相当数確保する必要があるが、互換が可能であるため必要最低限の数で済み、イニシャルコストとランニングコストの両方を抑えることができる。

 

車両移動器具を用いるまでもないちょっとした車両移動や、車両移動器具を用いるスペースがない場面において活用するタイヤスケーター。樹脂製のクサビをタイヤと地面の間に打ち込むことで車両の移動を行うことができる。

 


 

SPEC DATA
車名 日野
通称名 プロフィア
シャーシ型式 2PG-FH1AGA改
全長 8660mm
全幅 2500mm
全高 3560mm
ホイルベース 4200mm
最小回転半径 6.6m
車輌総重量 15685kg
乗車定員 5名
原動機型式 A09C(AT-IX)
総排気量 8866cc
駆動方式 2WD
ウインチ/前後引き(能力) ロッツラー製TR030/7(常時前7t後14t)
クレーン 古河ユニック製URG504URKA(2.93t)
照明装置 湘南工作所製SLD-6000UCL2-D
発電装置 湘南工作所製GE-2412B(10KVA)
配備年月日 平成31年3月22日
艤装メーカー 帝国繊維株式会社

 

 


 

お 知 ら せ
本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。
また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

 


 

取材協力:明石市消防局

写真:伊木則人/木下慎次

文:木下慎次


初出:2019年07月 Rising 夏号 [vol.14] 掲載
(※この記事はRising掲載記事を補完したWeb完全版です)

 


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