注目の消防車両 CLOSE-UP! 消防団指揮車

 焼津市消防団では新たにドローン仕様の消防団指揮車を製作し、運用を開始した。同車はドローン隊の出動車となることから、電源装置や映像装置等を備えるなど専用機能を強化。消防団指揮車とドローン隊出動車としての2面性をイメージして車体中央に白線をデザイン。車体側面には左右それぞれ異なるマーキングが施されている。近年では各地の常備消防において、本部や署配置の指揮車がドローン仕様とて製作されるケースが増えてきているが、消防団指揮車において本格的なドローン仕様として製作されるのは同車が全国初となる。

 ベースには機動性と収容力のバランスが良い日産のNV200バネット(DX)を採用。消防団員が運用することから取り回し性も考慮し、大きすぎない車体サイズとしてバネットが採用された。荷室部分はドローンや飛行に必要な資機材などを運搬できる構造とし、着脱可能なパイプ式ラックを装備。ラック上に災害種別に応じたボックスを収納できる。また、中段部分がフリースペースとなっており、ここにドローン本体などを積載することができる。この中段部分は後部座席をたたむことで連続した広いフラットスペースとすることができ、現場にて傷病者を寝かせたまま収容することが可能。一時収容や緊急搬送などに対応できるよう配慮されている。また、広いフラットスペースを活用して物資輸送を行う際などは、パイプ式ラックを取り外すことで大きな物を積み込むこともできる。
 たたんだ後部座席と床面の高さを揃えるためにかさ上げされた荷室部分下段には、照明装置や足場台(横長脚立)などの長尺アイテムが収納されている。

 ドローン仕様として強化されている機能の一つが電源装置だ。100V電源が得られるようインバーターを備えるとともに大容量ポータブル電源を装備し、電源を容易に持ち出せるようになっている。これにより大規模災害において長時間のドローン運用が必要になった場合でも、現場にて機体の予備バッテリーの充電に対応できる。屋外でのバッテリー充電で気になるのが温度。温度が非常に低い環境は、バッテリー駆動時間や充電能力に悪影響を与える可能性がある。そこでポータブル温冷庫を備え、悪条件でも最適な温度範囲で予備バッテリーを管理できるようにしている。
 もう一つの特徴が映像装置の強化だ。ドローンからの映像を大画面で確認できるのはもちろん、録画や再生などにも対応した19インチのカラーモニターを装備。これは映像業界で使用されるハイスペックな業務用機で、高輝度パネルにより明るい環境であっても確実に映像を確認することが可能。モニターは車外にせり出させて使用できるマウントに設置されており、車両横に設定した指揮所にて容易に映像情報を確認することが出来る。

 ドローンを「災害現場」で運用するという点に配慮した工夫もポイントで、瓦礫や浸水等の影響を考慮し、ドローンの離発着に欠かせない緊急用のランディングパッドを複数用意している。まず、通常のランディングパッドが設定できない事態を想定し、脚の長さを自在に変えられる足場台(横長脚立)と組み合わせて使用するランディングパッドにより、水平がとれない環境を考慮。浸水や泥濘により直接地面にランディングパッドを設定できない状況を考慮し、ルーフデッキに車上ランディングパッドを常設。デッキサイズに合わせ1.79m×1.12mのサイズで設計されており、パッド自体は車体やデッキの金属部の影響がすこしでも緩和できるようFRP樹脂製とし、表面をラプターライナーゴム系樹脂塗料で仕上げている。また、視界が悪くても上空から視認しやすいよう、車上には脱着式の青色点滅灯がセットできるようになっている。

 消防用のドローン仕様車両として、また、大規模自然災害で起こりうる現場環境を考慮して作り上げられた同車はドローン運用の場面を確実に広げることができ、上空から得られた情報を活動隊員に逐次知らせることで安全かつ迅速な災害対応を実現する大きな力を備えているのだ。

 

ドローン隊の出動車となる消防団指揮車。日産NV200バネットをベースに、ドローン仕様車として製作。左側面はドローン仕様をイメージしたマーキングとして、機体を図案化したエンブレムとスカイシュートのロゴが入る。(写真提供/焼津市消防団)

 

主警光灯はウイレン製のバータイプを採用。標識灯はスカイシュートのイメージカラーである青色に変更している。

 

右側面は消防団指揮車としての機能を象徴し、焼津市消防団の名称と共に市章を大胆にマーキングしている。

 


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