難解な現場を「シンプル」に帰結する

世界各国で指導を行うビル氏をオーストラリアから招き、講義や訓練が行われた。

 令和8年6月3日、4日の2日間、福岡県田川地区消防本部で「TRIAL SESSION ~act2~」が開催された。本イベントは、福岡県を中心にUSAR訓練や防災教育活動を展開するT-DRTが、海外で培われた知見を日本の現場に適応させ、実践的な救助技術として活用することを目的に企画したもので、CMC Rescue社およびファーノ・ジャパン・インクの協力のもと実施された。昨年に続き2回目の開催となる。

 今回は、CMC School Instructorであるビル・プロクター氏を招き、直接指導が行われた。ビル氏は世界各国での指導や救助活動の経験を有し、参加者に対してアリゾナボーテックスを活用した各種フレームアンカーの設定や運用についてレクチャーを行った。

 講義や実技を通じて繰り返し示されたのは、「シンプルに考える」という考え方だ。トライポッドやAフレームなどの基本的なフレームワークから応用的な設定までを学びながら、その根底にあるフォース(合力点)などの基本概念を理解することで、状況に応じた柔軟な展開が可能になることが示された。

 実技では、ビル氏が訓練場所の状況を確認しながら即座にプランを組み立て、既存の支点に頼らずシステムを構築。「支点がなければ支点を作る」という発想のもと、複雑な状況であっても基本原則に立ち返ることで対応できることを実演した。

 参加者からは「基礎から学んだことで、よりシンプルに考えられるようになった」との声も聞かれた。ビル氏は日本の消防職員について「非常に熱意を感じた」と評価するとともに、「訓練と学習を継続し、活動時は慌てず状況を評価することが大切」とメッセージを送った。

  • ウェビングテープを活用したジンポールの設定例。
  • 支点のない場所でも、建物内の構造物を活用して支点を構築する。
  • フォース(合力点)を見極め、控綱で自立したジンポール。
  • 上部構造とベランダ手すりを利用して固定されたフレームアンカー。
  • 脚部を調整し、室内空間に合わせて構築されたフレームアンカー。
  • フォース(合力点)を意識して構築されたサイドAフレーム。
  • 緊急時を想定し、人力でフレームを保持して支点を確保する。
  • マンホール救助を想定した訓練では、活動上の注意点も指導された。
  • 最新資機材「トリスケリオン」などの展示説明も行われた。
  • 最新電動ストレッチャー「VIPER」の展示。

 

本イベントを支えたビル氏、T-DRTメンバー、ファーノ・ジャパン・インクスタッフ。

 


 

 本記事は取材に基づく訓練レポートであり、訓練などの取り組みを紹介する趣旨で制作しております。記事中で紹介する訓練内容や活動技術等は、全てを網羅するものではありません。

 また、本記事を参考に訓練等を実施されて生じたいかなる事象につきましても、弊社および取材にご協力いただいた訓練実施団体等は、一切の責任を負いかねます。

 なお、記事中に掲載している車両・資機材等は、取材先で使用されていた装備を紹介するものであり、弊社が製造・販売・取扱いを行っていることを示すものではありません。

 


 

情報提供:T-DRT


初出:2026年7月 Rising 夏号 [vol.42] 掲載


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