世界初! 消防仕様H160導入 広島市消防航空隊 新たな一歩

広島市消防局は、約19年運用してきた消防ヘリコプターの更新に際し、エアバス・ヘリコプターズ社製のH160ヘリコプターを導入し、令和8年2月に3代目「ひろしま」として運航を開始した。H160は従来のドーファン系統を発展させた最新鋭機であり、日本国内ではこれまで警察用途として2機、報道用途として1機が運用されている。消防用途としての導入はこの機体が世界初となる。
機体更新による能力向上

機体下部のカーゴスリング装置に接続されたバケットは、機内からの遠隔操作で正確に放水することが可能。
機体性能の向上により、各種活動能力が大幅に強化されている。消火面では、消火用バケット容量が従来の約545Lから約1.7倍となる約910Lへと拡大し、近年続発する林野火災への対応力が向上した。救助面では、救助用ホイストが従来の約1.6倍となる、毎秒1.17mの巻上げ速度と最大250kgの吊上げ能力を有する。ホイストカメラにより、操縦士が吊上げ状況を確認しながら安全な救助が可能となった。
機内運用の面でも、スペースの拡大により床面積は4.2m²から5.02m²へ増加し、最大搭乗者数は11名(隊員6名+要救助者5名)から14名(隊員6名+要救助者8名)へと向上。これにより同時救助能力が高まっている。
さらに、従来は担架を機内で切り返しながら縦方向に収容していたが、新機体ではキャスター付ストレッチャーをそのまま横から収容できるようになり、救急搬送の効率も改善された。
情報収集の面でも、可視・赤外線一体型カメラにより撮影した映像を、消防局指令室や地上の消防隊等にリアルタイムに電送することが可能であり、電送方式を従来のアナログ方式からデジタル方式としたことで、より鮮明な映像を電送することができるようになった。


最大250kgの吊上げ能力を有する救助用ホイスト(写真左)。本体部分にはホイストカメラ(写真右上)を備え、操縦士がコックピットのモニターで状況確認できる。写真右下は実際の映像。

可視・赤外線一体型カメラは防振装置によりブレのない撮影が可能(写真左)。機内にはコントローラーと伝送システムを備える(写真右)。

機外拡声器も従来の約1.5倍となる1,200Wに高出力化。上空からの呼び掛けや避難誘導等に活用する。

飛行時にケーブルやワイヤー等による機体の損傷を最小限に抑えるワイヤーカッター。

通常は座席なども取り外してフラットな状態としているキャビン。後部には資機材収納部が設けられている。

救急対応を行う際のキャビンの状況。ストレッチャーを搭載し、座席を装着して運用する。

床面のシートトラックに固定パネルを装着し、ストレッチャーを収容できる。

専用のキャスター付ストレッチャー(写真左)はファーノ社の28-A1で、航空医療用モデル。救急出動の際はモニター付除細動器と携帯用電動吸引器を搭載した医療器架台(写真右)も搭載する。
| SPEC DATA | |
| 製造会社 | エアバス・ヘリコプターズ社製 |
| 製造国 | フランス |
| 型式 | H160-B |
| 全備重量 | 6,050kg |
| 装備済み空虚重量 | 4,114kg |
| 座席数 | 操縦席2座席+客室12座席 |
| エンジン形式 | サフラン・ヘリコプターエンジン社製/ARRANO 1A 2基 |
| エンジン出力 | 1,280馬力×2基 |
| 高速巡航速度 | 275km/h |
| 最大速度 | 315km/h |
| 最大航続距離 | 約880km |
安全性を支える先進装備
安全面においても大きな進化を遂げている。コックピットには、航法計器、気象レーダー等の最新の航空電子機器を装備。従来機にも搭載されていた、飛行高度、速度、方位等を維持する「自動操縦装置」や他の航空機との空中衝突の危険を警告する「空中衝突防止装置」に加え、新型機では、空中衝突を自動で回避する機能、救助活動時などの空中停止をサポートする自動操縦によるホバリング保持機能、異常姿勢からの自動回復機能などを備えている。また、機体が地上に接近した際に警告を発する「対地接近警報装置」や機体周辺の地形をコックピットの計器に表示する「合成視覚システム」など、最新鋭の安全機能・装置を備えており、運航の安全性が格段に向上している。
さらに、機体各部に設置されたカメラ映像を操縦席に表示できるため、従来は確認が困難であった死角の状況把握も可能となっている。

コックピットは最新のデジタル技術による計器類が並ぶ。モニターには状況に応じて各種情報を表示させることができる。

地形データや飛行高度等を基に3D画像を合成する合成視覚システム。周辺の地形が計器上に表示され、飛行経路上の山や谷などを確認しながら、より安全に飛行することができる(写真右)。また、垂直尾翼の上部に機外カメラを備えており、前方を見下ろすような形で機体周辺の状況をモニターに映し出す(写真左)。
運用体制と実働運用
運航は消防庁告示に基づくツーパイロット制を採用し、機長が右席、副操縦士が左席に着座する。副操縦士は操縦補助に加え、無線対応、運航管理、記録業務なども担う。
通常出動時は、操縦士2名、整備士2名、救助隊員2名の計6名で搭乗する。救助活動時には整備士がホイスト運用を担当し、1名が操作、もう1名が機内で救助補助を行うことで、安全を確保しながら要救助者の収容にあたる。
一方、救急出動時は操縦士2名、整備士1名、救助隊員2名の計5名体制とし、機内スペースと定員に余裕を持たせることで、傷病者および医療従事者の収容を優先する運用となっている。
なお、機種更新に伴い、操縦士および整備士は新機体に対応した資格を取得し、運用体制の確立が図られている。
広島市消防局の貞森英樹局長は、本機の導入について「世界初の消防仕様H160を導入できたことは誇りであり、その先進性能により消防防災活動のさらなる充実強化が期待される」と述べている。
本機は消火、救助、救急、情報収集といった多様な任務に投入される予定であり、これらの活動を通じて、県内全域を視野に入れた広域的な防災力を支える中核的存在としての役割を担っていく。

西区観音新町の広島ヘリポートにある広島市消防航空隊基地。
空からの消防活動― 広島市消防航空隊/航空救助機動隊
![]() 広島県内の航空消防体制は、西部を広島市消防航空隊(広島ヘリポート)、東部を広島県防災航空隊(広島空港)がカバーしている。 また、能登半島地震で課題となった孤立集落への対応強化を目的として、令和8年6月には航空救助機動隊の運用を開始。東消防署の国際消防救助隊登録員を中心に、救助隊員5名と救急隊員3名の計8名で編成され、陸路で接近困難な状況が発生した場合は同隊が消防ヘリで現場に急行し、活動を行う。
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新たな機体による各種災害を想定した訓練

運用が始まった3代目「ひろしま」(写真左)と、任務を終えた2代目「ひろしま」(写真右)。
| 本記事は取材に基づく訓練レポートであり、訓練などの取り組みを紹介する趣旨で制作しております。記事中で紹介する訓練内容や活動技術等は、全てを網羅するものではありません。
また、本記事を参考に訓練等を実施されて生じたいかなる事象につきましても、弊社および取材にご協力いただいた訓練実施団体等は、一切の責任を負いかねます。 なお、記事中に掲載している車両・資機材等は、取材先で使用されていた装備を紹介するものであり、弊社が製造・販売・取扱いを行っていることを示すものではありません。 |
取材協力:広島市消防局
訓練写真等提供:広島市消防局
写真・文:Rising取材班
初出:2026年7月 Rising 夏号 [vol.42] 掲載
(※この記事はRising掲載記事を補完したWeb完全版です)

































