消防と技術系災害ボランティアが挑んだ屋根上の現場

2025年9月5日12時50分頃、台風第15号の接近に伴い、静岡県牧之原市静波(しずなみ)から榛原郡吉田町大幡(おおはた)にかけて突風が発生した。気象庁機動調査班による現地調査により、この突風は竜巻と認められ、推定最大風速約75m/s、日本版改良藤田スケール(JEF)で上から3番目にあたるJEF3と判定された。これは同スケールが2016年に導入されて以降、最大級の強さであり、この竜巻により鉄骨系店舗の外壁材の飛散、電柱の折損、屋根ふき材の飛散などが発生し、牧之原市では住宅1100棟以上に損壊や浸水などの被害が及んだ。

被災家屋の屋根上の状況。割れた瓦が堆積しテレビアンテナも倒れている。
こうした中、状況を打破する新たな取り組みとして行われたのが、消防職員が公務として被災家屋の屋根の応急処置活動に参加するという、全国的にも珍しい取り組みだ。牧之原市危機管理課の要請をもとに、静岡市消防局(静岡市、島田市、牧之原市、吉田町、川根本町の3市2町を管轄)では職員の投入を決定。牧之原消防署および吉田消防署の消防隊員が、技術系災害ボランティア団体と連携して危険排除等の活動を実施した。
活動の流れとしては、牧之原市災害ボランティアセンターに寄せられた被災者の要望を受け、牧之原市が消防に対して派遣を依頼する仕組み。現場では過去の大規模災害でも復旧支援実績を持つ技術系災害ボランティア団体と、牧之原消防署及び吉田消防署の消防隊や特別救助隊等が連携して活動を実施した。消防に関しては他に火災や救助といった災害が発生した場合は、そちらにすぐ出動できるような体制をとりながら本活動にあたった。

家々の屋根がブルーシートで覆われている。また、奥の山の木々もなぎ倒されているのがわかる。
被災家屋は、竜巻の影響で瓦が飛ばされたり、不規則にずれてしまったりしていた。また、屋根自体が大きく損傷しているケースも多く発生していた。そこでまず、割れた瓦を撤去し、使用可能な瓦は寄せて整理した。すべての瓦を下ろすのではなく、健全なものを再使用して復旧させることで、シートを張って保護する面積を最小限に抑えることができ、後に風にあおられてシートが飛ばされてしまうといったリスクを避けることができるためだ。消防職員は足場のない屋根上といった環境での活動スキルや装備を有しているが、損壊した屋根の応急復旧のスキルは十分ではない。そこで、こうしたノウハウをボランティアから学びつつ、消防と技術系災害ボランティアが連携して屋根上での共同活動を行った。

屋根上での活動を展開する救助隊員。
消防機関が公務としてボランティアと連携して活動を実施するケースは全国的にも珍しく、連携モデルの一例として全国から注目が集まった。
自然災害の発災直後における高所での活動やチェーンソーでの倒木除去といった応急復旧活動は、対応可能な人手が圧倒的に不足し、対応に時間を要してしまうという現実がある。こうした場面において消防と技術系災害ボランティアが連携して活動を行うということは、専門性を相互に補完し合いながら、迅速かつ安全に二次被害の防止につなげる有効な取り組みの一つであることを示した。
今回の新たな連携モデルは、今後各地で発生し得る大規模自然災害への対応においても有効な先行事例となるものであり、今後の災害対応をより円滑に進めるための一つのヒントとなる取り組みといえるだろう。
取材協力:静岡市消防局
写真提供:静岡市消防局/特定非営利活動法人災害救援レスキューアシスト
文:木下慎次
初出:2026年4月 Rising 春号 [vol.41] 掲載









































