注目の消防車両 CLOSE-UP! 救助工作車 II型

この車両の製作を担当した警防救急課・勝又英也消防司令補。

静岡県の東部に位置する三島市、裾野市、長泉町の2市1町では、平成28年4月1日より「富士山南東消防本部」として、新たな消防体制でスタートした。このうち、裾野市を守備する裾野消防署に、静岡県内で2例目となるバス型救助工作車が平成27年度更新車両として配置された。仕様書の作成にあたっては、装備担当者が各艤装メーカー過去3年間分の納入実績を確認し、あわせて、消大同期生や全国の自主勉強会等でお世話になった仲間達からの支援で50以上の仕様書を入手するなど、時間の限り緻密なリサーチを行い、裾野消防署の体制や地域の実情に合わせ作成された。

これにより、車両構造のみならず、積載装備などにも近年注目される要素が投影されている。

たとえば積載する裏引きタイプの三連はしごは、ブラスト加工中央抜きや横さん、支管の強化、反射材の変更を行い、国内初の仕様にもなった。また昇降装置のハンドル部や停止位置の高さ、梯子を止めるバックルにもこだわるなど、活動性と安全性の向上に直結する優れた要素は積極的に取り入れているのだ。小さな資機材もデモンストレーションや取り扱いを行い、一つひとつ丁寧に選定するなど一途な思いが込められている。
また、車内や積載庫をじっくり見ると、実に繊細な配慮がなされていることに気付く。資機材は整然と収納され、オプションにない収納バックは製作。S字フックにはスイベルや保護チューブがセットされている。「救助隊としての規律や器具愛護の念、意識の熟成の大切さを形に表現したかった」という。あらゆる面で情熱が注ぎ込まれ高い活動性を実現している。

 

静岡県内2例目となる裾野消防署のバス型救助工作車。

 

右側にも隊員乗降用折り戸を備える。

 

ロープレスキュー系アイテムや大型油圧救助器具等を集中積載した左側面。

 

大型油圧救助器具は引き出し式収納に集中積載。ハリガンツールや枕木なども合わせて収めている(写真1)。大型油圧救助器具用のホースは専用バッグにより収納(写真2)。救助用脚立として耐荷重が高いものを採用(写真3)。引き出し式ロープラック。固縛用のバンドは自由に位置調整が出来るよう配慮している(写真4)。

 

右側面にはエンジンカッターやチェーンソーに加え加圧排煙機も積載。

 

船形担架はバックボードとセットで収納。固定ベルトを左右に広げずとも設定できるようにしているのがポイント(写真1)。エンジンカッターとチェーンソーは引き出し式収納に積載(写真2)。各種電動工具はバッテリーの互換性に配慮してチョイス(写真3)。照明発電装置のコントローラーやクレーンのリモコンなどは集中して積載(写真4)。

 

ウインチ装置は収納状態の際にワイヤーがガイドローラーと接触して破損などせぬようゴムホース等で養生されている(写真1)。支点として活用するフロントやリア、サイドのリングは使用範囲を気にせずに済む自在形アイボルト(フレノ・リンクボルト)を採用(写真2)。

 

車両後部には長尺アイテムを収める積載部を備える(写真1)。可搬式ウインチ用の積載庫は90度下開きの扉式とし、さらに90度展開することで内部のフック活用時に干渉しないよう配慮している(写真2)。

 

裏引きタイプの三連はしごを載せた昇降装置はハンドルや停止位置の高さにこだわった(写真1)。梯子を固定するバックルも解除の迅速性を意識しチョイス(写真2)。三連はしごは横さんや支管を強化し、ブラスト加工は中央抜きとしている(写真3)。反射材の変更とあわせ75度架梯の目安となる目印を備える(写真4)。

 

クレーンを中心に照明や積載はしご、大型ボックスが並ぶ(写真1)。クレーン装置はワイヤーロープを6段ブーム用に変更。操作時にブーム動線上の安全が確認できる補助灯を設けた(写真2)。照明装置は伸長時に架線障害が確認できる上向き補助灯と、現在高を把握できる警告灯を設けた(写真3)。積載庫を補完する車上縞板ボックス(写真4~5)。

 

活動性を最大限に活かすため足元スペースもスッキリさせている(写真1)。床面には耐水性に配慮し排水バットを設け車外へ排水(写真2)。左右に設けられた吊り棚(写真3)。各種フック(S字・J字等)は、擦れによる損傷を防止するため保護被膜を施している(写真4)。隊長席頭上には無線機や10連スイッチを装備(写真5)。収納棚は積載物の落下防止を図るべく、ネットでなく扉を設けた。また、資機材や防火服等の個人装備を吊下げるパイプを設けている(写真6)。隊員室に車両動態管理装置を取り付け、隊長席には車両動態管理装置と同期し、表示できるモニターを取り付けた(写真7)。

 

富士山を望む裾野消防署に配置された救助工作車。

 


 

本記事は最新消防装備等を広く紹介する趣旨で製作されたものであり、紹介する装備等は弊社が製造や販売を行うものではございません。

また、当該装備の製作や調達に関するお問い合わせを頂戴致しましても、弊社では対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

 


 

取材協力:富士山南東消防本部/裾野消防署

写真・文:木下慎次


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